あの日あの場所で 昔と今の自分と出会った

ああ、懐かしい。

14年前の21歳の時、私はこの場所に立っていた。

 

当時のあなたは私の気持ちには全く気づかないのか、気づかないふりだったのかわからないけど、「じゃあ!!」って言って、爽やかな笑顔で家路に着いたよね。

私は黙ってそれを見送って、しばらく立ちすくんで、それから…

やっぱり何だか居ても立っても居られなくなったから、駅の反対側に北口に続く階段を、彼が去っていった階段を登って、でも登り切らずに、また立ちすくんで…

とぼとぼと、元来た道を戻るように階段を降りて、涙を零しながら、声を出さずに歩き泣きした。

新町駅の自転車置場に置いていた自分の自転車を取りに向かい、鍵を開けて泣きながら乗ろうとした時、携帯に一通のメールが届いた。

「やっぱり、今からお前の家に行っていい?」

私は、その言葉に安堵して、また泣いてしまった。

そして、泣きながら自転車を漕ぎながら、先程とは打って変わった違う気持ちで家路に着いた。

 

そんな記憶を、私はまたこの階段で朧げに思い出しながら、一段一段登っていく。

14年前とは違い、今度は泣いていないし、爽やかに去っていったけど、また会いに来てくれた彼はいない。

けれど、そこには確かに私と彼がかつて何度か通って行き来した階段で、全く景色は変わってなくて、私達が昔とは色んなことが違うだけだった。

 

階段を登りきり、新町駅の北側を見下ろせる歩道橋にたどり着く。

そこは、14年前は見慣れた景色なはずなのに、知っているようで、知らない場所に感じた。

記憶は曖昧だ。

けれど、記憶の中の感情は鮮明だ。

この差は、きっとこの場所に来たから知れたことで、他の場所では感じれなかった。

きっと昔の私にとっては、色々な意味で忘れることはない場所だったのだろう。

 

歩道橋の上から景色をじっと眺めていると、昔感じた自分の気持ちが少しずつ、霞が取れていくように思い出された。今の私の姿形や年齢、物事の捉え方や価値観も変わったと思う。なのに、思い出された記憶には、14年前から今でも変わらない記憶が潜んでいて、それは彼に対する私の気持ちだった。

 

ああ、やっぱり貴方は変わらないんだな、と感じられることに、わたしは幸せを感じた。

全く私の気持ちには気づかない、それでいて自分の気持ちには正直で、決して曲がらない。

それがとても嬉しくて、悲しくて、今の私は、また14年前と同じくらい、歩道橋の上で泣いた。

昔と今の私の気持ちが重なり合う。

やっぱり、それでも貴方が好きだと。

 

貴方は、自分勝手な癖に、妙なところは聡くて優しくて、最終的には私よりも私の知らないところで傷ついてたりする。でも、その傷をわからせないくらい無表情で、強くあろうとして、そして倒れない。本当は、辛いのに決して見せることのない貴方の心は、誰も信用することなどなかった。

今はどうなのだろう…誰か信用できる人に出会えただろうか?

私は、貴方の心の拠り所になりたかった。

今も昔も変わらない、私の夢。

そのために、私は生きているのかもしれない。

 

貴方のカケラを拾うと、心が喜ぶ。

記憶や情報のカケラですら、私には宝物だと気付かされる。

ああ、貴方が存在しているだけで、私は幸せになれるんだなと自覚する。

もう、生きていればそれだけでいいんだと、貴方に気づかされる。

沈黙から、私を学ばせる。

本当に、貴方は凄くてずるい人だ。

今も昔も私を勝手に捉えて、でも無意識で無頓着で、他人事だ。

私が勝手にそうなってるだけだと、そんな事を言いかねないのはわかっている。

嫌いになりたいと、何度思っただろう。

到底無理なこと言うなと、私は自分に思う。

思えばさらに、好きになる。

終わりなき連鎖だ。

 

たくさんたくさんたくさん、

昔の自分と泣きながら話をした。

それは、哀しみの涙ではなくて、

喜びの涙だった。

 

そして、私は台風並みの雷が鳴る夕立を見ながら、彼への私のこの想いは、自由で縛られることのない私らしい純粋なものに思えて、これが愛なのかと感じた。

 

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なんでもないや (movie ver.) 歌詞
歌:RADWIMPS
作詞:野田洋次郎
作曲:野田洋次郎

 

二人の間 通り過ぎた風は どこから寂しさを運んできたの
泣いたりしたそのあとの空は やけに透き通っていたりしたんだ

 

いつもは尖ってた父の言葉が 今日は暖かく感じました
優しさも笑顔も夢の語り方も 知らなくて全部 君を真似たよ

 

もう少しだけでいい あと少しだけでいい もう少しだけでいいから
もう少しだけでいい あと少しだけでいい もう少しだけ くっついていようか

 

僕らタイムフライヤー

時を駆け上がるクライマー
時のかくれんぼ はぐれっこはもういやなんだ

嬉しくて泣くのは 悲しくて笑うのは
君の心が 君を追い越したんだよ

 

星にまで願って 手にいれたオモチャも 部屋の隅っこに今 転がってる
叶えたい夢も 今日で100個できたよ たった一つといつか 交換こしよう

 

いつもは喋らないあの子に今日は 放課後「また明日」と声をかけた
慣れないこともたまにならいいね 特にあなたが 隣にいたら

 

もう少しだけでいい あと少しだけでいい もう少しだけでいいから
もう少しだけでいい あと少しだけでいい もう少しだけ くっついていようよ

 

僕らタイムフライヤー 君を知っていたんだ
僕が 僕の名前を 覚えるよりずっと前に

 

君のいない 世界にも

何かの意味はきっとあって
でも君のいない 世界など

夏休みのない 八月のよう
君のいない 世界など

笑うことない サンタのよう
君のいない 世界など

 

僕らタイムフライヤー

時を駆け上がるクライマー
時のかくれんぼ はぐれっこはもういやなんだ

なんでもないや やっばりなんでもないや
今から行くよ

 

僕らタイムフライヤー

時を駆け上がるクライマー
時のかくれんぼ はぐれっこ はもういいよ

君は派手なクライヤー その涙 止めてみたいな
だけど 君は拒んだ

零れるままの涙を見てわかった

嬉くて泣くのは 悲しくて 笑うのは
僕の心が 僕を追い越したんだよ